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高知家庭裁判所 昭和60年(少ハ)2号 決定 1985年10月23日

本人 Y・O(昭和39.11.22生)

主文

本人を昭和61年4月30日まで中等少年院に継続して収容する。

理由

一. 本件申請の要旨は、本人は昭和59年10月29日中等少年院送致の決定をうけ、以来岡山少年院においてその処遇をなして来た。本人は入院当初から、性格上の問題点である不良顕示、短気が生活態度の随所にみられ、その都度、指導、助言を加えてきたが改善には至ちず、昭和60年2月8日口論(院長訓戒)、同年2月19日逃走企図(謹慎30日)、同年4月5日けんか(謹慎10日)の規律違反をした。

その後においては、本人は意欲的な生活態度を示して表面的には問題なく経過し、同年7月16日には1級下に進級していたが、同年8月22日他少年あて「出院後○○会(広島市内に本拠地をもつ暴力団)に入る」旨の不正通信が発覚した(同月24日謹慎5日)。更に同年10月3日悪口をいつたとして、他の在院生と口論のうえ、机をふりあげ、同人の顔面及び頭部を殴打するという傷害事件により同年10月11日謹慎20日、1級下から2級上に降下の決定をうけた。

本人に対する最重点課題は、やくざ的価値観の是正であり、上記規律違反から判断して現状では十分改善されているとはいいがたい。このままの状態で出院させた場合、入院前と同じく暴力団に所属して徒遊、覚せい剤使用といった生活に戻る虞れが大きい。

今後の処遇指針としては、暴力団の社会悪について認識させ、離脱の決意を固めさせることを重点に教育目標の徹底化が必要とされる。

ところで、本人の引受人は、実父であるが、同居の義母は、精神安定剤を常用しており、少年の義母に対する親和感は乏しい。これまでの親子関係からして出院後、円滑に家庭生活に入ることができるかどうか不安もあり、相当期間保護観察の実施が望まれる。これらの目標を達成するためには1か月以上の保護観察期間を含めて、8か月の収容継続期間が必要であるというにある。

二. そこで本件申請の当否を検討するに、成績経過記録表、再鑑別結果通知書写し、環境調整報告書写し2通、A及び本人にする当裁判所の調査、審問の結果によれば、本人は昭和55年3月26日窃盗・毒物及び劇物取締法違反事件で審判不開始決定を、次いで同58年9月13日前同事件で不処分決定をうけたのち、同59年10月29日窃盗、無印私文書偽造、同行使、詐欺、覚せい剤取締法違反事件により中等少年院への送致決定をうけ、岡山少年院に入院している。

本人の入院中の規律違反は、申請の要旨記載のとおりであり、進級の取消、降下決定のため、他少年より進級が相当遅れており、昭和60年10月11日、1級下から2級上に降下決定をうけている。

上記のような本人の規律違反は、未だ本人の性格上の問題点である不良顕示、短気及び暴力をもつて物事を解決しようとする態度が改善されていない結果と考えられる。

次に、本人の出院後の環境についてみると、家庭は実父、義母、異母妹の3人であるが、実父義母共本人に対する保護意欲は持つているが、過去の経過からして、本人に対する指導力はそれ程強くないものといわざるを得ない。

以上の諸点およびその他の諸要因を勘案すると、本人に対する約1年間の収容教育によつてその改善が十分になされたものとは言い難く、現在2級上の処遇段階にあることなどからして、このまま社会に出すことは再び社会的不適応をおこし犯罪をおかすおそれも高く、本人の犯罪的傾向がまだ矯正されていないものと認められるので、本件申請は理由があるものと判断される。

三. そこで、収容期間の相当性について検討するに、本人は現在なお2級上の段階にあり、仮退院までには通常の場合でもなお相当期間の収容教育を必要とするものと思料されるが、本人は本年11月には21歳に達することなどを考慮すると、この際本人および親の意欲を期待し、その自覚に基づいた行動をとらせるのが相当であるので、その期間は出来るだけ短期間にとどめることとし、昭和60年10月29日から同61年4月30日まで中等少年院に継続して収容するものとし、少年院法11条2項、4項により主文のとおり決定する。

(裁判官 青山高一)

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